5月11日の北海道を皮切りに4年半振りとなる全国弾き語りツアーを開催する斉藤和義。最新シングルは、阿部サダヲが主演を務めるドラマ『下剋上受験』の主題歌「遺伝」。楽曲制作への取り組み方、ツアーへの意気込みなどを本人から聞いた。
Profile
1993年に「僕の見たビートルズはTVの中」でデビュー。巧みなギタープレーと無骨で真理を捉えたメッセージ、力強くも温かな歌声で多くの音楽ファンを魅了。「歩いて帰ろう」「やぁ 無情」「ずっと好きだった」「やさしくなりたい」など歌い継がれるヒット曲も多い。「最近は4~5年ごとにやりたくなる」と語り、自身も楽しみにしている『弾き語りツアー2017“雨に唄えば”』が5月からスタートする。
斉藤和義(以下、斉藤)「台本を読ませていただいて、阿部サダヲさんが奮闘している映像が頭に浮かんで自然に曲と歌詞が一緒に出てきました。毎回ドラマの最後のシーンで流れると聞いていたので、画にうまくハマればいいなと思いながら作りましたね。できた時に、『これはフォークソングだな』と。今時ここまでフォークソングな曲もあまり聴かないなと思ったので、それを活かしたいと思いました。ニール・ヤングや吉田拓郎さんの系譜というか。細かい部分で違うニュアンスを加えていますが、基本は“どフォーク”です(笑)」
斉藤「人生って毎度毎度勝ってばかりじゃない。むしろ負ける数の方が多いんじゃないかなと。でも負けるからって最初から行動しないと何も変わらないし起こらない。曲調も歌詞の内容も、50歳という年齢だから書けた曲かなと思います。今までなら凝ったコードを入れたくなるけど、この曲はギター初心者でも弾けるくらいに簡単なコードだけです。でも、いらんことしてない曲を思いっきり弾いてるのが逆に気持ち良かったりもするんですよ」
斉藤「昔からの癖で、必ずギターを弾きながら歌います。ギターがないとノリがうまく出ないんですよ。ギターが必要ない時は音を拾わないようにエンジニアに設定してもらったりして。今回は歌詞もできていたので歌とギターを同時に録音しました」
斉藤「年を重ねると単純にノリが後退していくのかな(笑)。そういえば、トータス松本さんや吉井和哉さん、浜崎貴司さん、田島貴男くんなど年齢が近い者同士で仲が良いのでたまに飲んだりするんですが、皆ともだんだん後ろノリで歌いたくなってくるって話をしました。若いうちにそれを歌っても嘘っぽくなるんですが、『そろそろ俺らもありじゃないか』って盛り上がりました(笑)」
斉藤「ゆっくりした3拍子、いわゆる“ズンチャッチャ、ズンチャッチャ”のワルツのリズムです。それを感じながら歌うと自然にリズムに乗って歌えると思います。あと、1音1字じゃない譜割で歌詞を書いた部分があるので、そこが少し難しく感じる人がいるかも。英語の歌詞では当たり前でも、日本語は1音1字の方が歌いやすいですからね。その形を最初に壊したのは多分、吉田拓郎さんだと思います。だから拓郎さんの歌を聴くとヒントをもらえるかも(笑)」
斉藤「シリーズの第2弾なんですが、1作目を見て泣けるけどコメディ要素もある面白い映画だと感じました。どんな曲がエンドロールに流れたら似合うだろうと考えた時に、軽快なロックがいいなと思ったんです」
斉藤「それを目指しました。なので、昔ながらのロックンロールに長けた方々と一緒にレコーディングしたいと思い、ダメ元で細野晴臣さんにベース、林立夫さんにドラムをお願いしたら快諾してくださった。伝説のティン・パン・アレーが再現されるみたいでワクワクしました」
斉藤「映画では、参勤交代を終えて無事に自分の藩に帰る場面で流れると聞いていたので、いろんな経験をした後にそれを彷彿とさせるような歌詞にしたいと思って書きました。あとは、軽快なロックンロールでもあるし、ちょっと“おバカ感”が後味で残ったらいいなと思って書きましたね」
斉藤「これもグルーヴが肝。ただ、ロックンロールって歳月をかけてジャズから変遷したから、それをそのまま真似しようとしても多分難しい。なので、自分で気持ちいいと感じる“跳ね”ポイントを見つけて乗っかって歌うだけですね」
斉藤「そうだと思います。キース・リチャーズが『ロックはあるけど、ロールはどうした?』ってよく言うけど、かといって勉強するものでもないからエルヴィス・プレスリーやチャック・ベリーなんかを聴くと、“ロール”がどんな感じかつかめるかもしれませんって、人任せじゃダメかな(笑)」
斉藤「『ひまわりに積もる雪』は映像(Snow Beauty2016)の絵コンテを元に作っていきました。スノードームの中に車掌さんがいて、そこから部屋にいる女の子を見守るという映像でした。絵を見ていて浮かんだキーワードをノートに書いていって、その途中でメロも浮かんできたので曲にしていったら、そのままこの形になりました」
斉藤「『遺伝』の後ろノリの話じゃないですが、それぞれの楽器が微妙にずれながらも、それでいて気持ちのいいノリを見つけるのが意外に大変でした。まずドラムと俺はスクエアに刻んで、ベースとギターはわざとらしいくらいに後ろにしたら、ただ下手な人たちみたいになって(笑)。試行錯誤した末にCDの形に落ち着いたんですが、ベースだけを聴いたら彼には二度と仕事が来ないんじゃないかってくらいずれてます(笑)。シンプルで音数が少ない分、演奏で工夫していい音に仕上げたという感じですかね」
斉藤「この曲は誰かを想いながら、その人に語りかけるように歌う曲なのかなと思います」
斉藤「ギターを片手に曲を作ることが多く、それをアレンジという化粧をしてバンドサウンドにしていくんですが、たまに化粧を剥がして、“曲として成立しているか”を確かめたくなるんです。弾き語りというと手軽でお気楽な印象を持つ人もいるかもしれない。けれどお客さんにはバンドサウンドで表現していたものをギターだけで満足してもらわなければならない。大変なんですけれどそれが楽しみでもあります。ギターの他に、ドラムやキーボードも披露すると思うので、僕の中ではワンマンショーのようなイメージ。今僕がやりたいと思っている事をお見せできると思います」
コメディータッチのドラマ『下剋上受験』の主題歌で、家族の絆やチャレンジすることの大切さを伝えてくれる温かなバラードの表題曲「遺伝」。痛快なロックンロールに乗せてあっけらかんと歌う「行き先は未来」。淡々としながらもふわりと柔らかなサウンド感が魅力的な「ひまわりに積もる雪」。3曲全てにタイアップが付いている。
SPEEDSTAR RECORDS/ビクターエンタテインメント
[2/22発売]楽曲タイトル | 歌詞 | マイうた |
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遺伝 | 歌詞 | マイうた |
行き先は未来 | 歌詞 | マイうた |
ひまわりに積もる雪 | 歌詞 | マイうた |